念願の只見線を乗り通したはなしと、会津の魅力を知ったはなし

June 30, 2024Updated on September 1, 2024

はじめに

理由など特にないですが、雑に旅行記をしたためることにします。

私はいわゆる「乗り鉄」と呼ばれる人種にあたります。私に自由に旅程を組ませれば大半の時間は電車での移動になりますし、1日中電車に乗っていても飽きません。おまけに秘境駅マニアという属性にも当てはまりまして、秘境駅には問答無用で惹かれますしその路線が閑散としていればしているほど魅力に感じます(迷惑なやつだ)。そんなローカル線の敵なのか味方なのかわからない私ですが、多くの乗り鉄を自負する諸兄ら同様、只見線には憧れを持っており、いつかは乗り通してみたいと考えていました。只見線は2011年の豪雨被害を受け長らく不通となっていましたが、地元方々・沿線自治体の皆様のご尽力のお陰で2022年10月に全線で運転が再開されました。只見線は山岳地帯の中を縫うように走り、昔ながらの景色が色濃く残る路線であり、季節ごとに異なる景色を見せてくれます。完全に余談ですが、某PCメーカーの公式サイトでモニターのサンプル画像として用いられたこともあります。

今回はそんな只見線をようやく乗り通すことができたので、旅行記を残しておこうと思います。

ざっくり目的

  • 会津川口駅を訪問する
  • せっかくなので只見川橋梁の景色を眺められるスポットに訪れる
  • 会津の町を散策する
  • 1日目

    まずは只見線の起点駅である小出駅に向かうため、新幹線で浦佐駅を目指します。浦佐駅へ向かう新幹線の車内でも一悶着あったのですが、旅行記に残すほどのことではないので自分が思い出せればいい、程度に書き残しておきます。まるでアテンダントさんになった気分だぜ。テンション上がるなぁ(ヤケクソ)。

    浦佐駅からは上越線に乗り換え、小出駅を目指します。この時点で雨が降っており、傘を持っていないことを思い出しました。まぁ無いものはどうしようもないので、本降りにならないことを祈りながら進みます。小出駅には発車の20分ほど前に着いたのですが、すでにホームには目的の列車が到着していました。ある程度は覚悟していましたがここで改めて座れなさそうなことを察したので、発車時間までは小出駅を見て回ることにしました。これを読んでいるような諸兄らはご存知だと思いますが、駅舎には渡辺謙氏が揮毫した駅名標が掲げられているので一目見てきました。余談ですが、氏はニューヨークでこれを書き、FAXで送ったそうですね。ソースは不明です。

    一通り小出駅の散策を終え、只見線ホームへ向かいます。跨線橋の中にある只見線の時刻表が貼られている風景をみて、いよいよ只見線に乗車するのだと気持ちも高まります。全線開通してから1年以上経っていますが、車内は立ち客が出るほど満席でした。それもそのはず、私が訪れたのは3月の某日で青春18きっぷの利用可能な期間でした。加えて私が乗ったのは小出駅13時12分発会津若松行で、遠方から只見線を「乗り通す」ならおそらく唯一の選択肢とも言える便だからです。座席争奪戦に勝利した皆様は思い思いに只見線乗り通しの旅を楽しむ準備を行っていました。缶チューハイやハイボール、スナック菓子の袋を開けくつろいでいる人もいますし、熱心にカメラのレンズや設定を調整している人もいます。私は一番うしろに立ちながら、このスナック菓子と缶のお酒の独特の匂いが混じった空気が、カメラを持った諸兄らが臨戦態勢に入ることによって少しピリつくのを感じながら、いよいよ旅が始まるのだなぁと旅情に浸っていました。旅の醍醐味ってやつです。余談ですが、どうしても座りたいという人はこの便を避けるか、2、3本早い便で小出駅を訪れることをおすすめします。これは偏見ですが、18きっぷシーズンを避けることで大体の問題は解決する気がします。

    そんな乗客たちを乗せた列車(2両だし)はいよいよ小出駅を出発します。はじめにも述べた通り、只見線は車窓からの景色がとても素晴らしいです。山岳地帯を縫うように走っており、車窓からは破間川や只見川、それらの川の近くにあるダムや集落などを臨むことができます。見どころを上げていけばキリがありません。列車はいくつかのスポットで速度を落として運転してくれます。私は写真に残すくらいなら1秒でも長く目に焼き付けていたい刹那的な人間なのでここに載せられるような車窓からの写真はありませんが、立派なエモノを携えた諸兄等は駅名標やら徐行区間など、社内を縦横無尽に移動し窓に向かってカメラを向けています。私は一番うしろというある意味一番美味しいポジションに立っていたので、その諸兄等の邪魔にならないよう、時折ちょこまかと細かく移動しながら景色を楽しんでいました。これも旅の醍醐味ってやつですね。

    途中の只見駅で何人か降りる方がいましたが、同じくらいの人数が乗車してきました。只見駅近くの宿をとっているので只見駅にはこの後戻ってきます。列車は只見駅を出発し、集落や只見川の景色を見せてくれながら山間を進み、会津川口駅に到着しました。個人的には全国の中でも好きな駅のトップ3には入る駅です。ホームに降り立つと眼前に広がる只見川の景色は一度見れば忘れられないものになると思います。

    映像で見るばかりだった駅に実際に訪れることができ、感動もひとしおです。もっと長くいたい気持ちもありましたが、列車の発車時刻に合わせて車内に戻ります。会津若松方面に出発してからもしばらく川沿いを走り、水面に迫る勢いの集落を横目に走り抜けます。この区間の車窓は本当に美しいと思うので、只見線の旅を考えている方はぜひ楽しみにしておいてください。

    会津川口駅から4駅ほど乗車し、本日の最初の目的地だった会津宮下駅で下車します。目的は第一只見川橋梁を見下ろせるビュースポットですが、直線的な距離だけを考えれば1つとなりの会津桧原駅から向かっても同じくらいの距離です。会津宮下駅のほうが町の中心に近く観光交流所もあるため、こちらで降りることにしました。私の他に降りる人は1人いらっしゃいましたが、地元の方のようでした。駅から歩いてすぐのところに3つの橋が一度に見えるスポットがありました。一般道路の橋、鉄道橋、高速道路橋の3種類です。アーチ三兄弟と呼ばれているそうです。国内でも3種類の橋を一度に見渡せるポイントは珍しいのではないでしょうか?

    思わぬ見どころがあり少し得をした気分で第一只見川橋梁のビューポイントに向かいます。会津宮下駅からは歩いて40分弱かかります。次に乗る予定の列車の時間まで余裕があるとはいえ、油断していると時間がなくなってしまうので注意です。電車ではなく車で向かう方は近くに道の駅があるため、停めておく場所もあり便利です。

    雨は小降りにはなっていましたが、40分も歩けばそれなりに濡れてしまいます。それでもこのビューポイントからの景色は来てよかったと思えるものでした。小雨とはいえ雨が降っていたこともあるのかもしれませんが、私の他には誰もいなかったため少しばかりの時間この景色を独り占めできました。親切に只見線の車両が橋梁を渡る時間も掲示されていました。もう少し眺めていたい気分でしたが、本格的に宿に辿り着けなくなるので帰りの便に間に合うようにもと来た道を引き返します。そばにあった道の駅で只見駅までの食料と飲み物を調達し、ついでに少しばかりのお土産も購入しました。

    会津宮下駅は対面式の2面2線の駅なのですが、何を血迷ったか訪れた時と同じホームで待っていました。当然列車は反対側のホームに到着するのですが、構内踏切は列車が発車するまで開かないタイプでした。私は「あぁ次の便は何時にどっち方面だっけか」とか「宿のチェックインに間に合わないなぁ」なんて悠長に考えていたのですが、たまたま同じホームで待っていた旅行客グループの方々が向かい側のホームにいる降りたばかりの方に「乗ります!」と伝えてくれ、その方々が運転士さんに伝えてくれ、運転士の方が指令経由で構内踏切を開けてくださいました(みなさんありがとうございました)。おかげで旅程が崩れることを免れました。車内でその方達と話していたのですが、なんと地元が同じでした。思わぬところで縁を感じてしまいました。

    無事目的の便に乗ることができたため、予定通り只見駅に戻ってくることができました。宿は素泊まりで取っていたため、閉店前の地元の食堂に駆け込み、「1人なんですけどいけますか?」「お食事ですか?(この時間に?)」のやりとりをすませ、遅めの食事をいただきました。そういえばこの辺りではソースカツ丼がメジャーだという話を聞いた覚えがあったので、ソースカツ重をいただきました。

    宿に向かいますが1回はロビーとお風呂場まわり以外は電気が消えていました。どうやら私以外のほとんどの人は車で訪れていたようで、お宿全体はすでにおやすみモードになりつつありました。お部屋の案内と一通りの説明をしていただいた後、そそくさとお風呂に入って寝ることにしました。宿に置いてあった歯ブラシは毛の部分に歯磨き粉がついてるタイプでした。初めて見たのですがプチ感動でした。

    2日目

    只見駅近くの宿からスタートです。少し早めに宿を出て只見の街を散策します。少しゆっくりしすぎたため町の全体を散策しきれませんでしたが、旅程に響いてしまいそうなので只見駅に戻ります。会津に住んだことのある友人からおすすめのお店を教えてもらったので、お昼をそこで食べることにしていたのです。

    再び只見線の列車に乗り会津若松駅を目指します。会津川口駅ではしばらく停車するとのことなので、駅で地元の方が運営してくださっている売店で只見線のグッズを購入しました。時間に余裕もあったので、地元の卵を使用したプリンとコーヒーもいただきました。途中下車して近くの集落まで足を伸ばしたい気持ちもありましたが、次の目的地もあったので会津若松駅に向かいます。山間部を越えるとあたりを覆い尽くしていた雪も消え、地域輸送の色が出てき始めます。立ち客がちらほら出るくらいの混み具合になってきました。会津若松駅ではお土産という口実で地酒を自分向けに購入します。今回は榮川の會津ブレンドと呼ばれるものを購入しました。お土産もひと通り買い揃えたところで次の目的地に向かいます。

    次の目的地というのは牛乳屋食堂というお店で、芦ノ牧温泉駅から降りてすぐのところにあります。芦ノ牧温泉駅までは会津鉄道を利用します。会津鉄道は会津若松駅から(正確には2つとなりの西若松駅から)野岩鉄道、東武鉄道と乗り継ぐことで東京の都心につながっているので気軽に乗りに行くことができる路線でもあります。芦ノ牧温泉駅には猫の駅長がいます。猫の駅長といえば和歌山県にある和歌山電鐵貴志川線のイメージが強いかもしれませんが、全国にもいくつかあるようで、その中の1つとなっています。駅舎にはちょっとしたお土産コーナーと、待合室を兼ねた休憩スペースがあります。休憩スペースはカフェを彷彿とさせるおしゃれな作りでした。駅舎の外観はこじんまりとした西洋風の建物で、歴代の駅長の写真が飾られていました。

    駅舎を出てすぐ目に入るほど、多くの人が並んでいるのがわかります。幸い自分は1人で訪問したので、他のグループ客の方々よりは待たずに入ることができました。ラーメンが美味しいと聞いていたのですが、醤油ラーメンとソースカツ丼の半セットがあったのでそれを頼んでしまいました。待っている間にメニューを眺めていたのですが、ミルク味噌ラーメンという、いかにもこの店のウリだろという名前のメニューがあることに気づいてしまいました。少し勿体無いことをしたなと思いましたが、醤油ラーメンもソースカツ丼もおいしかったです。ミルク味噌ラーメンを食べられなかったのは心残りになってしまいましたが、幸い食堂の向かい側でお土産用に販売してくれているようでした。ミルク味噌の中でもいくつか種類があったので、1つずつ購入しました。生麺とお湯で割るタイプのスープがセットになっている、いわゆるチルドタイプに近いものでした。お土産用のものでもとても美味しかったので、これはぜひとも再訪してお店で食べたいと思いました。次に乗る予定の便の時間までは少し時間があったので、駅の周りを散策しました。芦ノ牧温泉という駅名なので温泉街まで足を運びたかったのですが、徒歩だと1時間ほどかかるようだったので断念しました。駅のまわりをぐるっと一周し、のどかな町の雰囲気を味わうことができました。駅舎の前では使われなくなった客車を利用したNゲージの展示があるので、興味のある方はそちらも楽しめると思います。

    おわりに

    今回の旅を通して、季節ごとに訪れてみたいと強く思えました。それほどまでに只見線の景色は感動できるものでした。只見線の復旧に向けて動いてくださった地域の方々・沿線自治体の方々には頭が上がりません。このような素晴らしい路線を維持するという選択、そして行動を取ってくださり、本当にありがとうございます。私は1鉄道ファンにしか過ぎないですが、実際に乗って、只見の街に訪れて、魅力を身の回りの人たちに伝えたり、少しずつできることから応援させていただこうと思います。